人見知りの私が“人に会いたい”と思う理由

人前に立つのが怖い

10代の頃、私は、とにかく人の目が気になってしまうことに悩んでいました。

高校1年の頃です。授業中、発表する機会が回ってきた際、緊張しすぎて、話す内容が飛んでしまったことがあったんです。恥ずかしいやら、悔しいやら、何ともいえない気持ちに。それから、「人前に立てば一生こういうことが起きる」と思い込むようになりました。

当時、所属していたバレーボール部では、「自分のプレーが仲間に迷惑をかけるのでは」と不安になって、半年から1年ほどプレーに集中できなくなってしまいました。
ある日、部のキャプテンからメールがあり、そこには池田先生のエッセー「雪柳 光の王冠」の言葉の一部が記されていました。

「雪柳」にはこうあります。

「雪柳は敏感だった。だれかが通り過ぎただけの風にも揺れる。あなたも、恥ずかしがり屋なら、そのままでいい。無神経になり、デリカシーをなくすことが『大人になる』ことじゃない。
コンクリートみたいに固い花はない。花は、みんな柔らかい。初々しい。傷つきやすい。人の思いに敏感なままの、その心を一生咲かせ続ける人が、本当に『強い』人なのだ」

キャプテンのメールの文中に「敏感な人」とあって、正直、最初ドキッとしたんです。「私は敏感だからみんなに迷惑かけているのかな?」って。でも違いました。人の目を気にする自分を「否定」したり、「隠したり」するのではなく、「生かす」ことが大事だというメッセージだったんです。

“自分を生かすってどういうことなんだろう”。私は「南無妙法蓮華経」と、題目を一生懸命にあげながら、まずは身近な人との関係を見直してみました。

今の自分の言動は、本当に誰かに迷惑をかけたり、被害を起こしたりしているのかな?
「迷惑だよ」と周囲から文句を言われたり、嫌がらせを受けたりしたことはあったかな?

立ち止まって考えてみたら、実は、そんなことはなくて。特に問題も起きていない。であれば、それほど心配することはないし、もう少し、今の自分のままで頑張ってみようかなという考えに変わり、学校生活が楽しめるようになっていきました。

さまざまな境遇の人の話を聞いて

とはいえ、それは劇的な変化ではなく徐々に、です。人前で緊張するという「自分」は今も変わっていません。でも、多くの人の前で話せたり、自分の意見をきちんと言えたりするようにはなりました。自分でも驚きです。でも、これは、一人の努力だけで成し得たことではありません。創価学会というコミュニティーがあったおかげなんです。

学会の会合では、みんなで輪になって、夢や目標だけでなく、悩みを共有することがあります。さまざまな境遇の人たちの挑戦する姿を目の当たりにして勇気が湧いた、なんてことは、一度や二度ではありません。

これまで、一人で問題を作り、心配し、やきもきして、「自分、何をやってるんだろう」とツッコミを入れては落ち込んでいました。そんな状態のことを、教育専門家の石田勝紀さんは「一人コント」と呼んでいるそうです。石田さんは

“周囲の人の話を聞き、実態を知ると、安心するというか、ちょっと笑えて来ます。笑ったときが一人コントが終わる時。実態を知るから、引いて客観視できて、笑うことができる”
(東洋経済オンライン、2022年4月28日)

と指摘しています。

確かにその通りで、いろんな人から話を聞くことで、自分を客観視できて心に余裕が生まれていきました。さらにいえば、自分だけでなく、相手の幸せにも重きを置く学会活動を通して、心のキャパシティー(容量)自体を広く、大きくすることもできたと実感します。

「敏感な人」=「よく観察する人」

私は現在、10代の学会員のグループである「未来部」の責任者をする中で、全国のメンバーと話す機会に恵まれています。大人が思う以上に、子どもたちは頼もしいですし、純粋で素直です。彼ら彼女らは、大人側の意図を鋭く察知します。

ですから、大人側も誠実で、真剣でなければいけないと思います。池田先生が常々おっしゃっていた、「子どもを一人の人格として尊重」することの大切さを痛感します。

と同時に、こういう時こそ“敏感な自分”の出番だとも思います。敏感、つまり、意識しやすいということは、言い換えれば「よく観察する」ということだからです。

元新聞記者で、エグゼクティブ・スピーチコーチの岡本純子さんは、「人前で緊張してしまう人は、“意識の矢”の向きを変えよう」と提案しています。

『自分が相手にどう見られるか』ではなく、『自分が相手をどう見るか』に変える。『相手がどんな人か知りたい』『この人と話したい』と興味の方向を自分から相手へと180度転換していけばいいのです」
(聖教新聞、2023年7月15日付)

創価学会はまさに「相手を知りたい・話したい」という思いによって成り立っている団体といえます。

10代の頃は観察する対象が自分にばかり向いていて、生きづらさにつながっていました。でも今は、その意識の方向を相手に向けることで、相手の考えや悩みにたどり着くことができます。

“こちらの思いが、相手の心を開いていくように!”。限られた時間の中で、本音で語り合うのは簡単ではないけれど、私は一期一会を大切にしながら対話に臨んでいます。「人の悩みの9割は人間関係」とよく聞きますが、他方で喜びの多くも人間関係の中に含まれていると実感する日々です。

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