話題の「〇〇」を読んで考えた、私が未来に残したいもの

あのマンガを読んでみた

おすすめのマンガは?と聞かれて最近答えているのは、これです。あまりマンガを読んだことのない私がハマった作品、『チ。―地球の運動について-』。
今、NHKでアニメ化もされ、話題になっています。

【あらすじ】舞台は、15世紀ヨーロッパのある国。「C教」の教えに反するものは、異端思想として、拷問や処刑の対象となるこの国で、主人公の少年は、ある時、宇宙に関する“ある仮説”に出合います――「地動説」です。当時、地球は宇宙の中心であるという「天動説」が正しいとされていました。禁じられた「地動説」に魅了され、少年は研究を始めるも、その道は険しく……。
命をかけて地動説を証明しようとした、少年と研究者たちの物語です。

さて、普段、マンガを読むこともさほどなく、天文学にも明るくない私が、一気読みし、さらには自分で全巻そろえてしまうほど惹かれたのはなぜか??
それは、“命をかけて何かを果たそうとする、かっこよすぎな人たち”と“託すことのすごさ”が描かれていたからです。

過去から届いたもの、未来に届くもの

“何かを果たそうとする”というのは、ここでは、地動説の研究です。『チ。』では、主人公たちが信念を貫き、禁じられた地動説を証明するために、命懸けで、「世に残す」「誰かに託す」という展開が繰り返されます。
「世に残す」のは、一人でできることではありません。一人が残したことを、誰かに「託す」ことで、未来に引き継がれていきます。個人的には、この壮大さや、登場人物たちの情熱、そして未来への繫がりのようなものにグッときました。

作者の魚豊さんは、なぜ「託す」というテーマを込めたのかについて、あるインタビューで、こう答えています。

そうやって古い本を眺めてたりすると「2000年も前の言葉や、紀元前400年の言葉が、今の僕の背中を押すって、どういうことだ?」とその威力に驚かされます。(中略)
真理や核心に迫る極限の言葉は何千年後にだって届く可能性があるし、昔の人と会話することは出来なくても、その言葉に今を生きる人間が背中を押されることで、時を超えてコミュニケーションが行われる気になる。
(ビックコミックBros.第一回スピリッツ新人王開催記念 魚豊氏インタビュー 前編)

はるか遠い過去の言葉や出来事に感動したり、励まされたりすることも、彼方の未来にそれがまだ残っていることも、シンプルに「すごい!」と感じます。「真理や核心に迫る極限の言葉」には、人の胸を打つ大きな力があるのでしょう。そして、それを誰かが、「残す」「託す」作業をしていくことで、未来の人々にも伝わっていく――
壮大なことのように思えますが、実は私たち学会員はこの営みを学会活動の中で繰り返していると思っています。

50年前の入場券

先日、女性部の会合に参加した時のことです。ある先輩が、手のひらサイズの小さなカードを見せてくれました。それは、56年前、会合のお知らせに来た学会員から渡された入場券でした。カードには、開催日時や会場の案内とともに、彼女への励ましの言葉が記されていました。

「静かであるが深い人 やさしいが強い人 平凡であるが英知の人 そして信心純粋の人 君の未来に栄光あれ」

当時、彼女は創価学会に入会して間もない頃だったそうです。その言葉に感動し、“これを生きる指針としよう”と決めたと言います。その決意のままに、さまざまな悩みや困難を乗り越えてきました。娘さんが結婚する際には、“人生の羅針盤に”と、この言葉を送ったそうです。
私もカードを見せてもらった時、とても感動しました。ここに書かれてあるような人になりたいとも思いました。
と同時に、しびれました。
漫画の世界や、どこか遠い人の話ではなく、私たちの身近でも日々「言葉」がつむがれ、託されていること。誰かを思い、託した言葉は、遠いはるか未来まで響き、誰かの胸に感動を届けていくことに。

永遠に朽ちないもの

前述の言葉を送った人は、きっと、彼女のことを思いながら、試行錯誤してつづったのだと思います。それが半世紀以上を経てもなお、人に感動を与えている。
「励ましたい」「伝えたい」と思い、目の前の一人に託した“メッセージ”。それは、もしかしたら、時を越え、世代を超え、人々の心に受け継がれていくかもしれません。

学会員は日頃から、「人を励ます」ことを大切にしています。友人の悩みを聞けば、一緒に悩んで、祈ります。何気なく行っているこうした行動の一つ一つが、「残すこと」「託すこと」につながっていくと思うと、感動を禁じ得ません。

振り返ると、私もたくさんの人から励ましを受けてきました。ある先輩は、「魂を込めた仕事は永遠に朽ちない」という池田先生の言葉を通して、エールを送ってくれました。仕事で悩んでいた時のことで、今でもその言葉は自分の支えになっています。同じように、仕事で悩んでいた友人に伝えたこともあります。

人の心を動かすものは、たった一行、一言でも、長く、広く、残っていく。そうであるならば、今、私が誰かにかけた一言も、一人から二人へと広がる可能性もあれば、長い時間をかけて未来に伝わる可能性もある――。
そんなロマンを胸に秘めながら、池田先生が書き残された言葉や仏法哲学を通して、友人や周りの人たちに励ましを送れる存在でありたいと思うのです。

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