「終戦の日」に考える――平和のために何ができるか

本日、79回目の「終戦の日」を迎えました。先の戦争や原爆で犠牲になられた方々のご冥福をお祈りいたします。

昨今の国際情勢を受けて、原爆や核兵器への関心が高まっています。昨年度の広島平和記念資料館は1955年の開館以来で過去最多の入館者数(198万人超)を記録し、長崎原爆資料館の入館者数も22年ぶりの高水準だったそうです。

その一方で気になるニュースもありました。今年行われた被爆者100人へのアンケートで、昨年5月の広島でのG7サミット後、世界が「核廃絶から遠ざかっている」との回答が7割を超えたというものです。

「核兵器はない方がいい」。多くの人がそう思うものの、課題の大きさから、自分一人ではどうしようもない無力感に覆われてしまうのもまた事実です。
79回目の「終戦の日」を迎えるにあたり、戦争のない世界のため、そして核兵器廃絶のため、今、私たちに何ができるかを考えたいと思います。

アメリカで感じたこと

私が平和について考えるきっかけになったのは、2010年からの5年間をアメリカ創価大学で過ごした時の経験です。

当時はテロが各国で多く発生していました。大学3年生の時にはケニアのショッピングモールでテロが起き、多くの尊い人命が奪われたというニュースを目にし、衝撃を受けました。

当時、私は文化人類学を専攻し、主に人間が持つ固定観念や偏見について学んでいました。文化や思想、習慣などの違いを超えて平和を実現するためには、一人一人の内面の変革が不可欠である。その思いを深くした経験でした。

大学卒業後、学会本部職員となり、現在、SGI(創価学会インタナショナル)の事務局に勤務しています。

一念の「発射の向き」を変える

以前、沖縄に行った時、ひめゆりの塔や沖縄県平和祈念資料館をめぐり、最後に恩納村にある創価学会の沖縄研修道場を訪問しました。

ここはかつて沖縄が米軍の統治下にあった時代に、核ミサイル「メースB」が配備された場所です。これは広島原爆の70倍の威力を持つと言われています。
そうした歴史がある中で研修道場を建設する際に、ミサイルの発射台を撤去するのではなく、“平和への記念碑に”との池田先生のご提案があり、今も発射台が残されています。
(※2024年8月現在は改修工事中のため見学できません)
(※沖縄研修道場の紹介はこちら

道場内には、池田先生の言葉が展示されていました。

「核も、戦争も、人の心から生まれた。ならば、まず人の一念の『発射の向き』を変えよ!その逆転の作業を!『碑』は、その象徴である」

私はこの言葉に、核兵器廃絶と向き合う上で忘れてはならない要点があると感じています。

仮に核兵器がなくなったとしても、人間の心そのものが変わらなければ、核に代わる新たな兵器が生み出されるかもしれない。まず向き合うべきは、人間の持つ「核兵器の存在を許す心」であるということです。

「自分さえよければよい」という自己中心さ、「よく知らないし分からない」という無関心、そして、「自分には何もできない」という諦め。こうした考えを変革することが、平和を実現するためには欠かせないでしょう。

被爆・戦争体験の継承運動

では、どうしたら内面の変革を促すことができるでしょうかーー。その契機になるのが、「対話」だと考えています。

創価学会は、核廃絶などの地球的課題の解決に向けて、行動する人々の連帯を広げ、意識啓発を促す草の根の運動を実践してきました。

私が所属する女性平和委員会では、昨年から20~30代のメンバーを中心に被爆・戦争体験の継承運動に取り組んでいます。直接証言を聞くことができる最後の世代として、対話の中で平和への思いを受け継ぐ機会を作ることを目的に、これまで全国16都道府県で実施しました。

ある女性部メンバーは、この取り組みで初めて、被爆者の証言を聞きました。それまでは原爆といっても「どこか遠くのこと」のように思っていたそうです。しかし、当事者の話に触れ、被爆の苦しみが後に続く世代にまで及んでいることを知り、「恐怖」を感じたといいます。「原爆や戦争は決して私たちと無関係ではない。だからこそ、もっと学んだり、知人・友人と話したり、自分にできる行動を起こしていきます」と語ってくれました。

当事者の思いを受け止め、平和への誓いを新たにする。そして、その思いを別の誰かに共有する――遠回りのように見えるかもしれませんが、こうした対話によって一人の人間の心がより良く変わっていけば、行動する人々の連帯が広がり、ひいては社会の変革、核兵器の廃絶にいたるのだと思います。

「人が作ったものを、人が無くせないわけがない」

そのことを強く確信したのは、今年3月に東京・国立競技場で行われた未来アクションフェスです。核兵器廃絶と気候変動対策をテーマに掲げたイベントでは、私たちもSGIユースとして、核兵器の恐ろしさを伝え、一人一人がこの問題に向き合うことを促す展示を実施しました。

当日は列ができるほど多くの方が来場してくださいました。初めて見る被爆証言の映像を真剣に聞き入る方や、原爆について初めて学ぶお子さんもいました。
また、「目の前の一人を大切にしようと思った」「核兵器の悲惨さを友人に伝えたい」などの感想をいただきました。核兵器の悲惨さを伝え、語っていくことの持つ意義を改めて深く感じました。

一人の人間のできることは、限られているかもしれません。ですが、決して無力ではないと思います。周囲との対話を通して、同じ志を持つ人との連帯が広がっていけば、より大きなムーブメントを起こしていけるはずです。

「人が作ったものを、人が無くせないわけがない」。被爆体験を話してくださったある方の言葉が、今でも胸から離れません。もちろん核兵器廃絶に関する課題は山積しています。でも私はこの言葉を信じて、今できる行動を一歩ずつ、足元から進めていきたいと思います。

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#平和 #核廃絶