“地域デビュー”したら見えてきた、自分にもできる「世界の変え方」
「2025年問題」という言葉を聞いたことがありますか?
日本は2025年、国民の4人に1人が75歳以上になると予測され、社会のあらゆる分野、場所で人手不足など、さまざまな影響が出てくるといわれています。
この「超高齢化社会」を迎えるにあたり、今こそ“地域”の身近なつながりを考え直したいと思います。
私の出身地が「住みたい田舎ベストランキング」第1位に
私は、大分県宇佐市の出身です。
何を隠そう、堂々たる田舎です。(宇佐市の皆さん、ごめんなさい!)
宇佐市は先日、ある雑誌の「住みたい田舎ベストランキング」のシニア世代部門で、第1位に輝きました。(月刊誌『田舎暮らしの本』2024年2月号)
そんな私の地元では、夕食のおかずを作り過ぎたら、おすそ分けするのが当たり前。
小学生の頃は、よくご近所さんからおかずをいただいたり、こちらからも持っていったり。
今振り返れば、地域のつながりが強かったんだなと思います。
転勤を機に東京に引っ越すと、そのつながりのギャップを感じました。
というのも、アパートの隣の部屋にどんな人が住んでいるかさえ、分からないからです。
地元との違いに寂しさを感じるとともに、首都圏では、今後30年の間に首都直下地震が70%の確率で起こるといわれ、いざ災害が起きた時にどれだけ周りで助け合えるのだろうか、と心配になりました。
そんな中、私自身、創価学会音楽隊のスタッフとして、これまで被災地での「希望の絆」コンサートに携わってきました。東日本大震災や熊本地震で被災した地域に伺うと、どのコンサートにも、学会員ではない方々が多く参加されていました。お話を聞いてみると、地域の学会員の方々からコンサートに誘われ、楽しみにして来たとのこと。日頃から声をかけ合う地域のつながりを感じるとともに、このつながりこそが、いざ何かあれば助け合える関係性になるのだと思いました。
地域の「防災サポーター」になってみた
私が住む新宿区で、どうやったら地域の皆さんとつながることができるのだろう――。
そう考えて、2022年に取り組み始めたのが、新宿区の「防災サポーター」というボランティアです。
(その時の話は、「私が地域防災の活動をやろうと思ったワケ〈上〉」に書きました。もしよければ、こちらもご覧ください。)
防災サポーターとして、行政が主催する防災会議や訓練などに出席していくと、町内会役員の方々と顔を合わせる機会が増え、私は地元の町内会にも参加してみました。
いざ取り組んでみると、これまで知らなかった、地域のいろんな課題が見えてきます。
例えば、町内会の担い手の高齢化だったり、地域の防災グッズや備蓄品の保管庫がどこにあり、その保管庫の鍵は誰が持っているのかだったり。
そして、私自身がいかに住んでいる地域のことを知らなかったのかを痛感したのです。
ある時、町内会で、行政からの助成金を使い、防災グッズを購入しようという話になりました。申請の書類作りなどを手伝うと、町内会の方々が想像以上に喜んでくださいました。
喜ばれると私もうれしくなり、ついつい、町内会の活動も頑張ってしまいます(笑)。
こうしたことに取り組む中で気付いたことは、創価学会の活動での経験が、地域の活動にも生かされるということです。
書類の作成、行事の運営、さまざまな会議の進行……。さらに、それらのベースにある、他者とコミュニケーションを重ね、物事を進める協調性など。
こうしたことは、創価学会の男子部や音楽隊の活動を通して、“一つずつ身に付いていたんだな”と実感しました。
すれ違った時にあいさつできる人が何人いるか
参加したての頃、町内会の先輩に言われました。
「道ですれ違った時にあいさつできる人が、何人いるか、が大事なんだよね」
ドキッとしました。“ほとんどいないなぁ”と思ったからです。
その後、町内会役員の一員として、いろんな活動を経験しました。
地域防災協議会にも参加して警察や消防とも連携したり、非常食のアルファ米を使用してカレーの炊き出し訓練をしたり。
実際のところ、仕事も家庭もある中で、町内会の活動の全てに取り組むには現実的に無理があります。けれど、私の場合は「防災」という分野に絞ってお手伝いをすることで、自分のできる範囲での地域活動を行うことができました。
今年2月には、地域の子どもたちと一緒に餅つき大会を開催しました。
「今度、餅つき大会をやるんで、よかったら来てください」
私が住むマンションのご近所さん、地域のパパ友ママ友にも、会話のきっかけとして自然に声をかけることができました。
今思うと、少しずつ「道ですれ違った時にあいさつする人」が増えてきたなと実感します。
こういう「徒歩圏内のつながり」があると、東京であっても、なんだか安心を感じるようになりました。
最初に「創価学会員」であると自己紹介した
町内会に入る時、町内会長・副会長などの役員の方々には、最初に「創価学会員」であることを言いました。
何を隠そう、私が防災について考えたきっかけは、創価学会音楽隊での経験にあるからです。
それに最初に言っておけば、後から「いつ言おうか……」と悩むこともありません(笑)。
私たち創価学会員は、人類の幸福と社会の繁栄、世界平和の実現を意味する「広宣流布」を目指しています。その活動を進める上で、鎌倉時代の僧侶・日蓮大聖人が書いた「御書」(門下などに送った手紙をまとめた分厚い本)を学んでいます。
その中に、次のような一節があります。
「汝、すべからく一身の安堵を思わば、まず四表の静謐を禱るべきものか」
(意味:自身の安心を考えるなら、あなたはまず社会全体の静穏を祈ることが必要ではないのか)
創価学会の中には、ほかにも地域貢献や防災の活動に尽力している人はたくさんいます。
“自分さえ助かればいい” “自分の家族さえ守れればいい”との考え方から、同じ地域に住む人のことまで思いを巡らし、自分にできることに挑戦しようと思えるのは、この大聖人の哲学を実践しているからだと思います。
自分自身の“今いる場所”を、より良くしていきたいと願って行動する――これが真の仏法者の姿です。
創価学会が目指す人類の幸福や世界平和。こういうと、とても大きな話のようにも聞こえます。ですが、私にとっての広宣流布は、徒歩圏内ですれ違う人たちと会話を交わし、地域のために自分ができることで貢献することでした。そうした「手触り感」のある身近なことから、世界は少しずつ変わっていくのではないでしょうか。
そう考えると、きっと誰にでも「自分にできる広宣流布」があるはずです。