ヘイトスピーチとの闘いは私たち全員の責務〜連載「ヘイトスピーチを考える」①
6月18日は、国連総会で決議された「ヘイトスピーチと闘う国際デー」。今、世界各地で、社会の分断や差別を助長するヘイトスピーチが脅威となっています。連載「ヘイトスピーチを考える」では、ヘイトスピーチの解説や国内外の状況、仏法の視座から考えるオピニオン記事などを全8回に分けてお届けします。
第1回では、「そもそもヘイトスピーチとは何か」について解説します。
そもそもヘイトスピーチとは?
現状、ヘイトスピーチの定義について国際的に統一された基準は存在しません。国連では、「宗教、民族、国籍、人種、肌の色、家系、性、その他のアイデンティティーの要素に基づき、個人や団体を軽蔑または差別的な表現で攻撃する言動、記述、振る舞い」(参照:ヘイトスピーチに関する国連戦略・行動計画)などと説明されています。日本では、「差別的言動」「憎悪表現」などと訳されます。ヘイトスピーチに当たる言動はさまざまですが、例えば、「○○人は祖国に帰れ!」「○○人は殺せ」「○○人はゴキブリだ」といった表現が該当します。
一般的な「悪口」との違いとして、①差別しようとする明確な意図がある、②暴力や差別的行為を助長・扇動する、の2点が挙げられます。「ヘイトスピーチ」と聞くと、デモ行進や街宣活動をイメージする人が多いかもしれませんが、インターネットやSNSでの誹謗中傷でも当てはまる場合があります。
歴史を振り返ると、ナチスによるホロコーストやルワンダ虐殺など、ヘイトスピーチの流行が、差別やジェノサイド(大量虐殺)につながった事例は多くあります。その意味で、ヘイトスピーチは、社会を分断する脅威といえます。
ヘイトスピーチは世界的な課題
インターネットやSNSが普及して以降、ネット空間におけるヘイトスピーチは急速に広がり、世界各地で外国人排斥や差別などが発生しています。こうした状況を危惧した国連は、2019年6月18日に「ヘイトスピーチに関する国連戦略・行動計画」を発表。ヘイトスピーチの脅威を示すとともに、具体的な対策を発表しました。
2年後の2021年の国連総会では、「ヘイトスピーチと闘う国際デー」の制定が決まりました。昨年6月、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、この日に寄せてのメッセージで呼び掛けています。
ヘイトスピーチはあらゆる人々にとって危険であり、それと闘うことは私たち全員の責務です。本日初めて迎えるヘイトスピーチと闘う国際デーは、行動を呼びかける日です。多様性と包摂性の尊重をさらに促進することでヘイトスピーチを阻止し、終わらせるために、私たちができるすべての行動を取ることを改めて決意しようではありませんか。
出典:https://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/sg/44361/
日本も例外ではありません。事実、一部地域では、特定の集団に対するヘイトスピーチが問題になりました。地域社会の安心・安全を考えた時、ヘイトスピーチは避けては通れない課題なのです。
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