広島から「核なき世界」への潮流を

広島から「核なき世界」への潮流を

人類史上初の原爆が広島に投下されてより、78年目の夏を迎えた。“75年は草木も生えない”といわれた街は、奇跡の復興を遂げ、平和を発信する電源地へと生まれ変わった。
 
きょうからニューヨークの国連本部で、核不拡散条約(NPT)の第10回再検討会議が行われ、広島出身の岸田文雄氏が日本国首相として初めて参加する。ロシアのウクライナ侵攻をはじめ、国際社会が緊迫の度を増し、核兵器使用のリスクが「冷戦後で最も危険なレベル」にまで高まっているといわれる中で開催される今回のNPT再検討会議。唯一の戦争被爆国である日本が、核軍縮に向けて、リーダーシップを発揮してもらいたい。

核問題という〝現代文明の一凶〟

原子爆弾によって、一瞬にして焼き尽くされた広島。「もう誰にも味わわせてはならない」と、被爆者は被爆の実相を語り続けている。その平均年齢は84歳を超える。先日、青年部や未来部に被爆体験を語った女性は「被爆者の心を想像してほしい。相手の心に思いをはせ想像することが平和をつくる第一歩になる」と、後継の青年たちに核廃絶の重要性を訴え、期待を寄せた。
 
本年で40回目を数える毎年の「SGIの日」記念提言の中で、池田大作先生は、恩師・戸田城聖先生の「遺訓の第一」である「原水爆禁止宣言」を原点に、核兵器廃絶を訴え続けてこられた。今年の提言には、こうつづられている。

「核問題を一貫して取り上げ、核兵器禁止条約の実現をあらゆる角度から後押ししてきたのも、核問題という〝現代文明の一凶〟を解決することなくして、人類の宿命転換は果たせないと確信してきたからでした」

2022年1月27日付聖教新聞

私自身、被爆3世として生まれ、幼い頃から原爆の面影が身近にあった。祖母の喉には、被爆の衝撃でガラス片が突き刺さったことによる、大きな傷があったのだ。その祖母は当時のことを語ることなく、亡くなってしまった。祖母から聞けたことは、幼い時に聞いた、「原爆でガラスが刺さったんよ」の一言だけ。祖母はそれ以上話すことはなかった。今も、そのときに受けた衝撃と、祖母の悲しそうな表情は今でも忘れられない。そんな祖母の姿を通して、原爆の恐ろしさが私の心に鮮明に刻まれている。大切な人を傷つけ、命を奪う原爆の非人道性を、誰も容認することはできないはずだ。
 
被爆者から直接、被爆証言を聞くことがますます難しい時を迎えている。今後、若い世代が被爆証言に触れていくことが、平和継承のために重要であると実感している。今の生活も、街並みも、77年前からつながっている。だから私も過去の戦争を「自分ごと」として捉え、平和への思いを伝えていきたい。広島には、その使命があると強く確信する。

G7サミット広島開催に向けて

明年5月、先進7カ国首脳会議(G7サミット)が広島市で開催される。被爆地での開催は初めてであり、その意義は極めて大きい。イギリス、フランスの現役首脳が広島市を訪れるのは初めてであり、核兵器国であるアメリカ、イギリス、フランスの首脳が広島で顔をそろえる歴史的なサミットとなる。

池田先生は以前から、政治指導者の被爆地訪問の重要性を訴え続けてこられた。G7サミットの広島開催が決まる前、本年1月に発表された「SGIの日」記念提言においても、G7サミットにあわせて、「広島で『核兵器の役割軽減に関する首脳級会合』を行い、他の国々の首脳の参加も得ながら、これらの具体的な措置を進めるための方途について集中的に討議してはどうでしょうか」と提案されていた。戸田先生、池田先生の「核兵器廃絶」への闘争を継承する広島青年部として、明年のG7サミット広島開催に向けて、「核兵器のない世界」を希求する青年の声を結集していく決意だ。
 
池田先生は今回のNPT再検討会議に寄せて、「核兵器の先制不使用」の誓約などを求める緊急提案を発表された。その結びで、「人の地によって倒れたる者の、返って地をお(押)さえて起つがごとし」(御書新版697ページ・御書全集552ページ)を拝され、「危機を危機だけで終わらせず、そこから立ち上がって新たな時代を切り開くことに、人間の真価はある」と訴えられた。

危機の時代だからこそ、危機から立ち上がって「新たな時代」を開く私たち広島の地道な挑戦こそが、世界平和の実現に直結すると固く信じる。核兵器を造り出したのが人間ならば、廃絶できるのも人間にほかならない。だからこそ、一人ひとりの心に生命尊厳の思想を打ち立て、核を断じて許さぬ土台を築く必要がある。とりわけ、私たち青年の対話運動こそが核兵器廃絶、世界平和へとつながっていくと確信する。

その先頭に広島青年部が立っていく。立ち上がった時こそ、「核兵器の終わりの始まり」となる。広島から「核兵器のない世界」への潮流を起こすため、目の前の一人と心を結び合い、核兵器の非人道性を語り継ぐ取り組みを進める決意である。

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#地域 #平和 #核廃絶