沖縄本土復帰50年に思う

沖縄本土復帰50年に思う

2022年5月15日、沖縄の本土復帰から50年を迎える。

沖縄の新たな50年の開幕にあたり、改めて、その歴史を紐解きながら、沖縄で生まれ育った青年の一人として、愛する沖縄の使命を考えてみたい。

幾つもの〝世替わり〟を経て

美しいこの島は、何度も“世替わり”を経験してきた。

1879年の廃藩置県により、450年余続いた琉球王国が終焉。沖縄県が設置され〝ヤマト世(ゆー)〟が始まった。

太平洋戦争では、本土防衛の「捨て石」となり、最も凄惨な地上戦が繰り広げられた。〝戦世(いくさゆー)〟は多くの尊い命を奪い、島の形さえも変えた。

戦後7年が経った1952年4月28日、サンフランシスコ平和条約が発効。日本は連合国による占領から主権を回復したが、沖縄は日本から切り離されアメリカの施政権下に。〝アメリカ世(ゆー)〟が始まった4月28日を「屈辱の日」として、全県民が本土復帰を訴え、運動を展開してきた。

最も苦しんだ沖縄が、最も幸福に

創価学会の池田大作先生が沖縄に第一歩を記されたのは、米軍施政権下の1960年。いまだに戦争の爪痕が色濃く残り、人心が大きく揺れ動いていた時だった。

県民の多くが発展はおろか、復興の希望すら見えていない中、池田先生は苦労を重ねてきた沖縄の人々に寄り添い、励ましを送り続けた。

〝最も苦しんだ沖縄が、最も幸福に〟――それは宿命転換の法である仏法に照らして、忍従と慟哭を繰り返してきた沖縄が、必ず世界に誇る宝島になるとの確信にほかならない。

仏法には「三変土田」という原理がある。そこに生きる人の心が変われば、環境を変えていくことができる。社会とは人の集合体である。つまり社会の幸福も一人の人間の幸福から始まる。

池田先生が「一人の人間における偉大な人間革命は、やがて一国の宿命の転換をも成し遂げ、さらに全人類の宿命の転換をも可能にする」との主題である小説『人間革命』の執筆を、復帰前の沖縄の地で開始されたことに深い意味を感じてならない。

1967年、池田先生は沖縄返還への具体的な道筋が見えない中、沖縄の本土復帰を求める提言を発表。池田先生は、民衆の幸福に尽くす仏法者の責務として、私は叫ばずにはいられなかった、と提言に至った心情をつづられている。

名桜大学名誉学長を務めた故・東江康治氏は、池田先生の提言について「『沖縄の思い』そのものであり、池田会長は、日本を代表する『沖縄に対する良識』といえるでしょう」と語っている(「聖教新聞」2012年5月15日付)。

そして、先生の〝復帰提言〟から5年後の72年5月15日、沖縄の本土復帰が実現した。

「沖縄の心」を世界へ

以来50星霜――厳しい雇用状況や子どもの貧困などの課題も山積しているが、明るい話題も多い。

昨年には、沖縄のやんばる(沖縄本島北部地域)や西表島などが、世界自然遺産に登録。4月からは、沖縄を舞台とした連続テレビ小説も始まるなど、ますます注目を集めている。

さらに、このほど総務省が公表した2021年10月時点の人口推計では、全国で人口の減少傾向が続く中、沖縄だけが人口が増えた。その要因は、出生児数の多さによるもの。少子高齢社会の中、沖縄は40代までの人口が全体の過半数を超える〝青年の島〟だ。

年間観光客数も、本土復帰した1972年が約56万人だったのに対し、3年前には1000万人を超えてハワイと並んだ。まさに、沖縄は世界に誇るリゾート地として定着し、大きな飛躍を遂げている。

沖縄には、「イチャリバチョーデー ヌーフィダティヌアガ(出会えば、皆、兄弟 何の隔てがあろうか)」や「チムグリサン(他人の苦しみは我が苦しみ)」、「ユイマール(相互扶助)」という伝統の心がある。

垣根を飛び越えて心を合わせ、共に悩み、共に手を取り合って難局を乗り越えていくのが「沖縄の心」だ。それには立場や人種、国境などあらゆる差異を超えて、世界を結ぶ力がある。

池田先生は本土復帰30年の折に、こうつづられている。

「世界中に平和と友好の津梁(懸け橋)を広げゆく先駆者たる沖縄健児よ! 皆様の使命の宝島こそ『永遠平和の理想郷』だ。戦火のやまぬ世界に、最も必要な平和の太陽こそ、『沖縄の心』だからである」

「聖教新聞」2002年5月28日付、随筆「新・人間革命」 沖縄 世界に輝く宝島

先生の言葉通りに、あまたの苦難を乗り越え、発展を遂げる沖縄こそ、世界の希望と輝き続けていくにちがいない。

長引くコロナ禍や国際情勢が混迷を極める現代。利己主義がはびこり「分断」の勢力が増している今こそ、世界が「沖縄の心」を必要としているのではないか。

その心を広げゆく担い手こそ、沖縄男子部の使命だと確信してやまない。池田先生が沖縄の地で書き起こされた「人間革命」の哲理を胸に、沖縄の青年から、世界平和の連帯を広げていきたい。

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