創価学会音楽隊 東北の被災地でのコンサートを再開

創価学会音楽隊 東北の被災地でのコンサートを再開

創価学会音楽隊の「希望の絆」コンサートが、この4月、2年ぶりに現地で再開。創価グロリア吹奏楽団が、9、10日に岩手・大船渡市、釜石市、遠野市を訪れ、生演奏を披露した。

筆者も音楽隊スタッフの一員として、全行程に同行した。本番で一層強さと温かみを増す楽団の演奏。それに呼応するかのように、じんと感じ入る聴取の姿。やはり対面でのコンサートには、オンラインでは得難い感動がある。終演後、楽団員と地元の方々が、まるで一度会ったことがあるかのように親しく交流する様子を見て、「心と心をつなぐ音楽の力」に胸が熱くなった。

公演回数は170回以上

このコンサートは、東日本大震災による被災者の〝心の復興〟を願い、2014年3月から始まったものである。これまで、首都圏の「創価ルネサンスバンガード」「創価グロリア吹奏楽団」「しなの合唱団」、関西の「関西吹奏楽団」の4楽団が復興支援コンサートを行い、東北のほかにも、2016年4月の「熊本地震」や2018年の「西日本豪雨」の被災地等でも開催。公演回数は170回を超える。

コンサートでは、「母」や「誓いの青年よ」といった学会歌のみならず、繊細なクラシックの楽曲、懐かしの昭和歌謡や、流行のポップスなど演目は多彩。また演奏や歌だけでなく、時に振り付けあり、見栄や気取りをかなぐり捨てた〝コスプレ〟ありで、会場を爆笑の渦に飲み込むシーンもある。〝聴く人に少しでも元気を送りたい〟〝この一瞬だけでも心の癒しになれるならば何でもやる!〟との決意と覚悟――。どうしたら被災した方々に寄り添えるのか、喜んでもらえるのかと悩み、知恵を出し合う中で、次々とレパートリーが増えていった。


「私も負けずに頑張ろうと思えるんです」

今回の岩手でのコンサートでも、ユーモアを交えた楽器紹介をはじめ、演歌の名曲メドレー、復興支援ソング「花は咲く」など、幅広いジャンルの音色が響いた。

会場には、時に腹を抱えて笑う姿もあれば、時に目頭を押さえて涙を拭う姿もある。釜石のコンサートに参加した一人の壮年が語っていた言葉が心に残った。

「震災から11年の月日がたっても、被災地のことを忘れずに来てくれる。心を込めて励ましてくれる人がいるから、私も負けずに頑張ろうと思えるんです」

また、ある婦人は、楽団員への手紙を持参して演奏会に訪れた。その婦人は、2015年6月に岩手で行った「しなの合唱団」のコンサートの思い出を〝心の宝物〟として、その時に撮った集合写真を自宅に飾っているという。つらい時や、負けそうになった時に、その写真を見れば、あの時、感動した励ましの旋律が蘇ってくるのだと教えてくれた。

手紙には、大病を患い、〝これでもか、これでもか〟と苦難を乗り越え続けてきた思いがつづられていた。今回、創価グロリア吹奏楽団が岩手に来ると聞いて、いてもたってもいられず、筆を執ったのだという。そこには――

「誰よりも、皆様は、人を癒やし、悲しみも苦しみも包み、前向きにしてくれる。これは日本一というより、世界一だと感じています」

「心の復興」のモデル

音楽隊が紡ぐ「希望の絆」コンサートは、演奏が行われているその時だけが本番ではない。コンサートを通じて結んだ絆を胸に抱き、互いが前進の糧として生きていく。それは決して、一方通行の「励まし」ではない。住む場所は違えど、演奏する側、聴く側、その双方が抱く、互いを思い合う真心。民衆による民衆のための創価の文化運動の意義は、まさにここにあると思う。

東日本大震災の発災から3年後に始まり、今も続く「希望の絆」コンサート。被災された方々にとって一番のショックは「忘れられる」ことだという。だからこそ、震災の記憶を風化させず、励ましの絆を双方向で強く、太くしていく音楽隊の取り組みは、「心の復興」のモデルの一つといえるのではないだろうか。名実ともに、日本一となった創価学会音楽隊が、社会で果たす役割への期待は、ますます高まっていると確信してやまない。

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