逆境で光る「強さ」 2025年4月度座談会拝読御書「兄弟抄」
創価学会では、毎月、全国各地で座談会という集いを開き、鎌倉時代の日蓮大聖人(1222年~1282年)が書き残された「御書」(論文や手紙など)を学び合います。機関誌の「大白蓮華」や「聖教新聞」には、その月に学ぶ「座談会拝読御書」を解説する記事が掲載されていますので、ここでは、信仰を持っていない方々にも理解しやすい視点から、青年部員が御書の内容を解説します。
春4月。入学、入社も大きな節目ですが、「進級」も環境が大きく変わります。
私も中学のクラス替えで、仲の悪い生徒と同じクラスになり、苦痛を感じていましたが、同じ部活の友人に励まされ、救われたことを覚えています。
それは20数年が経った今も変わらないようで、4月から幼稚園年中になる長女も人生初のクラス替えを経験。「◯◯ちゃんと一緒じゃないと嫌だ」と言っていましたが、無事、同じクラスになれたようで、親としては一安心(祈っていたことが1つ叶いました)。
とはいえ、すべて望み通りの環境になることは、そうそうありません。思いもしない苦難や逆境が目の前に現れた時、どう受け止めるかは大きな課題です。
今回は、「兄弟抄」を通し、逆境は自分を強くするチャンスであることを学びます。
拝読御書について
1276年(建治2年)4月、日蓮大聖人が55歳の時に身延で著され、武蔵国池上(今の東京都大田区池上)の門下である池上兄弟(兄・宗仲[むねなか]、弟・宗長[むねなが])と、その夫人たちに送られたお手紙です。
池上兄弟がいつ入信したかは、はっきりしませんが、草創以来の門下であると伝承されています。池上家は有力な工匠で、鎌倉幕府に仕えていましたが、父が兄弟の法華経の信仰に反対し、兄・宗仲を勘当します。
当時の武家社会における勘当は、家督相続権を失うことであり、経済的な基盤も社会的な身分を奪われるという厳しい圧迫でした。弟・宗長にとっては、信心反対の父に従えば、兄・宗仲が継ぐはずの家督を譲り受けることを意味します。大聖人は、特に弟・宗長の信心が揺さぶられることを心配され、激励されています。
兄に対する勘当は1度ならず2度に及びましたが、兄弟は大聖人のご指導通りに実践し、最後は父が入信します。
鍛えれば傷が現れる
本文
各々随分に法華経を信ぜられつるゆえに、過去の重罪をせめいだし給いて候。たとえば、鉄をよくよくきたえばきずのあらわるるがごとし。石はやけばはいとなる。金はやけば真金となる。
(御書新版1474㌻1行目~2行目・御書全集1083㌻11行目~12行目)
意味
あなたたち(=池上兄弟)は、懸命に法華経を信じてきたので、過去世の重罪を責め出されているのです。例えば、鉄を十分に鍛え打てば内部の傷が表面に現れるのと同様である。石は焼けば灰となる。金は焼けば真金となる。
拝読箇所の前半で、苦難が起こったのは、兄弟が「随分に」(持てる力の限り)信心に励んできたからであると仰せです。
過去に積んだ法華経を誹謗した罪を、本来なら「重く」(未来世にわたって長く)受けるところを、自らが法華経を弘め、法を護った功徳によって現世に「軽く」受ける「転重軽受」の原理を教えられています。
続く「せめいだし」という表現に師匠が弟子を思う心を感じます。それは、兄弟が懸命に法華経を信じているので難を受けている。
そのことを大聖人はありありと知っているからこそ、勘当という、世間的には困難な状況であっても、大聖人ご自身と同じように「転重軽受」であり、この逆境を乗り越えられるのだと、確信を込めて兄弟に伝えられたのでしょう。
そして大聖人は、「鉄をよくよくきたえばきずのあらわるるがごとし」と、剣などを作る鍛治の過程において、鉄を鍛え打つことで、「きず」(内部の傷、不純物)がたたき出され、より強靭になることを例えに挙げられます。
鉄を鍛えるには、熱した鉄を何度も叩かなければなりません。私たちに置き換えるなら、逆境に遭っても自分らしく諦めず、挑戦する姿ともいえます。兄弟はそれぞれが置かれた立場に重ね、「今は、自身の生命から不純物を出しているのだ、それは目には見えなかったが、信心を貫くなかで、目の前に現れたのだ」と勇気が心に灯ったことが目に浮かびます。
拝読箇所の最後には、石は焼けば灰となるが、金は焼くことによって真金となると示されます。
逆境が自分を鍛える
逆境とは、自身を強くするために、必要なものと捉えることができるのではないでしょうか。
新年度を迎え、新しい環境に変わる方もいらっしゃるかもしれません。希望通りの環境にならないこともあるでしょうし、希望通りの環境になったとしても、全てが順調に進むとも限りません。
私も、仕事が立て込んで追い詰められた時、“もう無理だぁ……”と投げやりな気持ちでいると、仕事ははかどりませんが、“やってやるぞ!”と闘志を湧かせると、頭も体もめまぐるしく動き出し、普段よりスピードもクオリティも上がって仕事をやり切ることができた、なんて経験が何度もあります。結局のところ、ちょっとやそっとのことでは動じない、「強さ」を身につけてきたようにも思います。
人生において、さまざまな逆境に遭遇することがあります。大事なことは、その逆境をどう捉え、向き合っていくかではないでしょうか。
創価学会員が信仰を持ち、実践するのは「悩みを無くす」ことが目的ではありません。
勇気を持って悩みや困難に立ち向かい、乗り越えられるように、「生命を強くする」こと目指していると言えるかもしれません。
池田先生は綴っています。
「人生は、悩みとの戦いです。大事なことは、自分にのしかかる、さまざまな苦悩や問題を、いかに解決していくかです。『悩み』を越えた向こう側にある『勝利』に向かって、知恵を絞り、努力を重ねることです。
もし、こんな悩みがなければ──と現実を離れ、夢を見ているだけの生き方は、敗北です。どうすれば、今の課題を乗り越え、価値と勝利に変えていけるか──常に、その前向きな努力をなす人が『勝つ人』なんです。
自分の一念が、そのまま人生となる──この真理を、見事なる勝利の劇で証明する『名優』であっていただきたい。また、周囲にも『自信』をもたせる『励ましの人』であっていただきたい」(『新・人間革命』第30巻〔下〕「誓願」)
逆境に遭ったら、自分を強くするチャンス! 前向きな努力で自分らしく輝いて、周囲に希望を送れる人でありたいです。
御書のページ数は、創価学会発行の『日蓮大聖人御書全集 新版』(御書新版)、『日蓮大聖人御書全集』(御書全集)のものです。
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