「尽くす」ことで世界が広がる 2024年11月度座談会拝読御書「衆生身心御書」
創価学会では、毎月、全国各地で座談会という集いを開き、鎌倉時代の日蓮大聖人(1222年~1282年)が書き残された「御書」(論文や手紙など)を学び合います。機関誌の「大白蓮華」や「聖教新聞」には、その月に学ぶ「座談会拝読御書」を解説する記事が掲載されていますので、ここでは、信仰を持っていない方々にも理解しやすい視点から、青年部員が御書の内容を解説します。
妻と子どもと3人で暮らしていて、以前より強く感じるようになったことがあります。
それは、自分のことよりも、他人のことを心配し、思いやれる自分になったことです。
日々の生活はもちろん大変。(子どもの寝かしつけに2時間かかるなんて想像もしていませんでした・・・・・・)
でも、大変な中に、充実と幸福感を感じています。
人のために尽くし、人のために生きることで、その分だけ幸福も大きくなるのではないでしょうか。
今回の拝読御書「衆生身心御書」から、この「人のために尽くす喜び」について学んでいきましょう!
拝読御書について
本抄は前後の部分が欠けているため、誰に宛てられたのか、また、執筆された年月日などの詳細は不明ですが、1275年~1278年(建治期)に、身延の日蓮大聖人に、弟子がタケノコなどの供養の品をお届けしたことに対する御返事と考えられます。
貴重な食料を大聖人のもとに
本文
当世は世みだれて民の力よわし。いとまなき時なれども、心ざしのゆくところ、山中の法華経へ、もうそうがたかんなをおくらせ給う。福田によきたねを下ろさせ給うか。なみだもとどまらず。
(御書新版2047㌻5行目~7行目・御書全集1595㌻18行目~1596㌻1行目)
意味
今の世は乱れて民の生きる活力も弱まっている。暇もない時節なのに、強い信心のゆえに(日蓮の身を案じて)身延の山中の法華経へ、貴重なタケノコを供養されました。福田に素晴らしい善根の種を蒔かれたのでしょうか。その厚い志に涙も止まらない。
語句の説明
・「もうそうがたかんな」(孟宗が筍)
「孟宗のタケノコ」の意。中国の三国時代の呉の孟宗が、冬に母親の好物のタケノコを手に入れた故事に由来する。得がたいものを手に入れることを譬えている。
当時の日本は、蒙古襲来の危機などにより国中が混乱しているありさまでした。
この状況下にあって、庶民の暮らしも当然、苦しいものであったことでしょう。
明日をも知れぬ身の、一人一人の庶民。その人々に寄り添い、苦悩から救う道を教えていたのが日蓮大聖人でした。
少し先の未来も見通せない、闇に覆われたような当時の日本において、大聖人の存在は希望の光だったともいえます。
このように、大聖人が国や人を良くする人だと確信していたからこそ、本抄を送られた弟子は、少しの食料さえも惜しいような世情にあっても、大聖人のもとへ真心からの供養の品をお届けされたのでしょう。
その弟子に対して大聖人は、供養という「尽くす」行動によって、自分の生命という福田に善き種を蒔くことにつながっていると教え、「涙も止まらない」と感激したことを伝えておられます。
大切なのは、供養した門下の志と言えます。
供養を届けた門下にとっては、わずかの食料も「自分の命」のようなものです。
その貴重な自分の命を何に使うのか――深遠な人間の生き方を、この御文から拝することができるのです。
大聖人は今回の御文で、“命”にも等しい供養をささげた弟子に対して、「正しき法・人に尽くせば、その功徳は必ず自身に返ってくる」という仏法の法則を、端的に教えられています。
時間を何に使うのか
私たちの日々の生活に置き換えてみるとどうでしょうか。
「タイパ」「コスパ」が叫ばれる現代。
仕事に家庭、プライベートと忙しい中で、何かのために貢献する、尽くすという行動は、そもそもとても尊い挑戦です。
だからこそ、その貴重な自身の時間を、何に使っていくのか、明確にしていくことが重要ではないでしょうか。
時間を使うとは、本質から言えば「命を使う」ことといってもよいでしょう。
池田先生は、教えています。
「自分の『命』を、いったい何に『使う』のか。大目的に生き抜く使命を深く自覚した瞬間から、境涯は大きく広がる」
この「大目的」が大事です。
冒頭では身近な家族の話をしましたが、地域や、職場においても同じです。
人のために“尽くした時間”の分だけ、真剣になれるし、情が湧いてきます。
だから、人の幸せが自分の幸せになります。
地域のために、ゴミ拾いやあいさつ運動をする。
会社のために、自分の仕事で一生懸命、貢献していく。その対象は、同僚のため、取引先のためと広がっていきます。
“尽くす”ことから始まって、その先に、
地域の知らなかった側面を知り、新しい人と交流でき、
会社では、自分の仕事の範囲を超えて全体観に立てるようになります。
自分のためだけでなく、より大きな目的のために、命を使うと決めれば、自分の見える世界が広がっていくのです。
「幸せが広がる」とも言えるでしょうか。
私も、創価学会の活動を通し、地域のさまざまな人と接する中で、人の幸せを祈って行動できるようになりました。そんな相手が成長していく様子、苦難を勝ち越えた喜びを間近で見ると心から幸せを感じます。
私が“尽くす”先には、人類の幸福と世界の平和という、創価学会が目指す大きな大きな目的が広がっています。
ぜひ、身近なところから、尽くした先に広がる世界を体感してみてください!
御書のページ数は、創価学会発行の『日蓮大聖人御書全集 新版』(御書新版)、『日蓮大聖人御書全集』(御書全集)のものです。
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