「身近なところ」から幸福を広げる 2024年9月度座談会拝読御書「高橋殿御返事(米穀御書)」

創価学会では、毎月、全国各地で座談会という集いを開き、鎌倉時代の日蓮大聖人(1222年~1282年)が書き残された「御書」(論文や手紙など)を学び合います。機関誌の「大白蓮華」や「聖教新聞」には、その月に学ぶ「座談会拝読御書」を解説する記事が掲載されていますので、ここでは、信仰を持っていない方々にも理解しやすい視点から、青年部員が御書の内容を解説します。

皆さん、「地域」って言われて何を思い浮かべますか。

私自身、職場や家庭に比べると、普段、あまり意識したことがなかったのか、これまで「自分が住んでいるところ」といった漠然としたイメージしか持っていませんでした。

しかし、先日、待望の第1子が誕生したことで、それが劇的に変わりました。頼れる人たちが近くにいて心強いな、とか、最寄り駅にエレベーターやホームドアがあったらいいな、とか、自分でも驚くくらい、居住する地域について考えるようになりました。

今回は、そんな地域や職場、家庭など、一人一人にとっての「身近なところ」がテーマです。

拝読御書について

今月の御書は、「高橋殿御返事」です。身延におられる日蓮大聖人が、駿河国(静岡県中央部)富士地方で、門下の中心的な役割を担っていた弟子に与えられた、と考えられるお手紙の一部(断簡)です。駿河国の古くからの門下であった高橋六郎兵衛に宛てられたとされてきましたが、詳しいことは分かっていません。

本抄の冒頭、大聖人は、法華経の行者を養う米穀は、一切衆生を救いゆく大慈悲の米穀であると述べられています(こうしたことから、この御書には、「米穀御書」という別名が付けられています)。そして大聖人のもとに供養を届けた弟子の真心を喜ばれ、「あなたの身に釈迦仏、地涌の菩薩が入り替わられたのであろうか」と称賛されています。

そして、「その国の仏法流布(弘めること)は、あなたにお任せします」と、地域への仏法流布を託されるとともに、仏種は縁によって起こるのであるから、万人成仏の種である法華経の教えを説き広めていくよう教えられています。

「対話」で仏の生命を呼び起こす

本文

その国の仏法は貴辺にまかせたてまつり候ぞ。「仏種は縁より起こる。この故に一乗を説く」なるべし。

(御書新版1953ページ14行目~15行目・御書全集1467ページ17行目)

意味

その国の仏法流布は、あなたにお任せします。「仏種は縁によって起こる。そのゆえに一乗(法華経)を説く」のである。

「その国」とは、本抄をいただいた門下の、住む地域一帯との意味です。私たちで言えば、居住する地域や職場、家庭など、自身に関わる場所全般と拝することができるでしょう。大聖人は全幅の信頼を込めて、「その地域の仏法はあなたにお任せします」と仰っているのです。富士地方の門下は、師の信頼と期待に、さぞかし胸を熱くし、奮い立ったことと思います。

では、大聖人から任される仏法の流布とは、現代で言えば、具体的にはどんなことでしょうか。

結論から言えば、あらゆる人間の尊厳を差別なく説き明かした人間主義の仏法、その思想を広げていくこと、そして、それによって仏法の根本目的である人々の幸福を実現することです。

それは、単に創価学会員を増やす、みたいな話ではありません。信心している、していないにかかわらず、お互いに励まし合って、安心できる、希望を持てる、心の安全地帯を作っていくこと、とも言えるでしょう。

そして、そのための方法として門下に促しているのが「対話」の実践です。

続いての御文に、「仏種は縁によって起こる。そのゆえに一乗(法華経)を説く」とあります。

本来、あらゆる人に仏の生命が具わっていますが、仏界の真実を説いた法華経に縁しなければ、内在する仏の生命が働き始めることはありません。なので、すでに仏法に縁している人たち(私もです!)が、仏の生命を呼び起こす強い「縁」となっていくために、他者の幸せを信じて祈り、仏の仕事を為す「声」を出していくことが大事というわけです。

ただ、「対話」といっても、難しく考える必要はありません。まずは、爽やかな挨拶や温かな声掛けなど、日頃の振る舞いを大切にしていくところから始めていきたいものです。

自分らしく地域広布を

今回の拝読御文、学会員として活動していて、何度となく拝読してきました。数え切れないほどです(笑)。そして、この御文の通り、「より良い町を作ろう」と挑戦する学会員さんもまた、数え切れないほどいらっしゃいます。

そう考えると、「今いる地域が自身の使命の本舞台である」という自覚を促すことが、学会活動の意義の一つであるようにも思います。そして、それが「国や世界をより良くしよう」という意識にもつながっていく。創価学会の平和運動といっても、こうした身近な地域での学会員の姿にこそ、その実像があるのではないでしょうか。

池田先生は、次のような指針を贈ってくださっています。

「人間の絆が薄らぐ社会だからこそ、心をつなぐ誠実な行動が光る。真心の対話から幸の仏縁が生まれる。

皆、宿縁の眷属なりと信頼の連帯を広げよう! ここに希望と蘇生の安全地帯があるからだ」(2019年10月22日付「聖教新聞」)

自分の身近に幸福を広げよう――そう決意するところから、より良い町、住みやすい町が作られるのではないでしょうか。

私自身、この夏、仏法者として地域に貢献の一歩を踏み出そうと、数多くの友人と共に、夏祭りの手伝いに挑戦してみました。祭りの関係者から感謝と労いの言葉をかけてもらってうれしかっただけでなく、思いを行動に移せたからこその充実感も感じられました。さらに、皆で話し合いながら体を動かす中で、地域の若者の連帯も強まった気がします。

これからも地域をはじめ、「身近なところ」をより良くするため、自分らしく〝地域広布〟に取り組んでいきたいと思います。

皆さんも、一歩を踏み出してみませんか。

御書のページ数は、創価学会発行の『日蓮大聖人御書全集 新版』(御書新版)、『日蓮大聖人御書全集』(御書全集)のものです。

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